A:広域制圧兵器 ヴァリアポット
ゾラージャ王は外征のために多くの兵器を開発させたんだけど、実のところ失敗作も少なくなかったと言われていてね。そのひとつが、広域制圧兵器ヴァリアポッドだ。磁力を使って敵の動きを阻害しつつ、放雷して無力化するという、実に強力な存在さ。ただ全力稼働には、周囲から雷気を取り込む必要があってね。つまり、雷気の少ない障壁外では役に立たないってわけ。そうして放棄された試作機が、今や市民の脅威に……
討伐対象にされたのも道理だろう?
~ギルドシップの手配書より
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ショートショートエオルゼア冒険譚
この所気の滅入る仕事が多かったこともあってあたしと相方は、仕事を受けるためにギルドシップに行くついでに街で気晴らしでもしようと話しながら拠点にしている宿を出た。
小物や洋服を物色した後、食事を摂るためにレストランに入ったのだが、そこで食べた食事がやたら美味しくて、あたしは食欲を抑えきれず久しぶりに暴食した。だがそれが大失敗だった。どうやらその料理にはしこたまお酒が入っていたらしく、不覚にもお酒最弱で全く飲めないあたしは完全にヘベレケになってしまい、まっすぐ歩けず相方に肩を抱きかかえられるようにしてギルドシップを訪れた。
無駄にテンションが高く陽気になったあたしを椅子に座らせ、相方がギルドシップの担当者から仕事の斡旋を受けている。
「アレクサンドリアの武王になったゾラ―ジャ王は沢山の兵器を開発したんだが、既存の兵器のアップグレードならともかく、新規開発となると失敗作も多くてね。こいつは中でも失敗作として有名なんだ」
ギルドシップの担当は受付のカウンターに片肘を突きながら依頼の書かれた帳面をパラパラとめくって言った。
「何処の宗教から買ったの?」
あんまり話が聞こえていなかったあたしは標的のイラストが描かれた帳面を覗き込んで、中年のおばちゃん真っ青の口調で詰問するように言った。ギルドシップの受付担当は目を丸くして「は?」と声を漏らした。
「だ~か~ら~、ゾラ―ジャはどこの宗教からその壺を買ったのよ?」
あたしは自分の頓珍漢を棚に上げて、なんで話が読めないんだという雰囲気全開で再度言った。
「いや、まぁ…壺ではあるんだけど」
陽気でテンションマックスなのに加え、全く話が聞こえない状態のあたしに詰問されるギルドシップの受付担当者が不憫だったのだろう。見ていられなくなった相方があたしを嗜める。
「違うわよ、話聞いてなかったでしょ?確かに壺だけどゾラ―ジャは兵器として作ったんよ。ね?」
ギルドシップの受付担当は相方に同意を求められ、細かく何度か頷いた。
「作ったんだ…」
あたしは話が分かって言ってるのか、はたまた単にオウム返ししたのか分からないような調子で言った。
ギルドシップの受付担当者は意味不明な話をするあたしでは話にならないと踏んだらしく、あからさまに相方の方に体を向けて説明を始めた。
「こいつは広域制圧兵器としての性能や威力としては抜群で磁力を使って敵の動きを阻害しつつ、放雷して無力化するという実に有能な平気なんだ。」
「何処が失敗作なん?」
話しを飲み込んだ様子の相方の質問にギルドシップの受付担当は気を良くしたらしく、得意満面に解説し始めた。
「この兵器の主力攻撃は放電でね。周囲の雷気を機体の内部に取り込んで回転しながら自分を中心として最大半径50mという広範囲に放電することにより、敵を感電死、または行動不能な状態にしてしまう。」
相方はウンウンと頷きながら相槌を打つ。
「すごい効果範囲ね」
「だろ?でも攻撃媒体のコストダウンに拘り過ぎたのさ。例えていうなら河童王国が陸上の国を侵略するのに巨大渦巻発生装置を開発するようなもんで、侵略が目的で兵器開発したっていうのに、雷気に満ちたヘリテージファウンド内では効果絶大でも雷気の少ない障壁の外ではてんで役に立たないのさ。」
「…まさにただの壺やん」
「俺に言わせりゃ防衛兵器として配置すればよかったのにと思うけど、開発陣の間抜けっぷりに頭に来たのかゾラージャはこの兵器を荒野に投棄しちまったのさ」
相方は鼻をふ~んと鳴らして言った。
「失敗作だから壊してくれって言ってるのはアレクサンドリアの陶芸家?」
前後不覚のままなんとか話に入りたいあたしに相方は苦笑いしながらあたしの顔を掌で押して黙らせ、自分が後を続けた
「つまり野放しになってたんじゃ危なくてエレクトロ―プの保守作業もままならないから破壊してほしいってことかな?」
ギルドシップの受付担当者は大きく頷いた。
「そういう事なんだが、ひとつ問題がある」
相方は「何?」と問いかけるように首を傾けた。
「えっと、君らに任せていいんだよね?」
ギルドシップの担当者は横目でイビキを掻き始めたあたしを見ながら言った。
ヘリテージファウンド